迷子の衝動

好きな映画や音楽のお話を。Netflixの掘り出し物コンテンツも紹介します。

第7回爆音映画祭 感想まとめ(その2)

第7回爆音映画祭の感想日記、第2弾でござい。どんだけ遅筆なんでしょう。 

5月18日

ターミネーター

 テレビで見たことがあるような気がしていたが、どうやら見たことなかったらしい。「こんな話だっけ?」という感じだった。僕が物心ついたときにテレビでやっていたのは『ターミネーター2』の方だったようだ。シュワちゃんの名台詞「I'll be back.」も「こんなシーンで言ってたのか!」と驚いた。台詞ばかりが有名になって、内容を知っている人は意外と少ないのではないだろうか。
最初の未来での戦闘シーン、耳に刺さるような爆音。今回の爆音映画祭でもトップレベルなんじゃないかというくらい、大きい音に感じた。一瞬たりとも飽きることのない怒涛の展開にハラハラドキドキさせられっぱなし。ターミネーターのメカの造形もかっこよく、さすがはジェームズ・キャメロン。巨匠となった監督の初期作品はどれもかっこいいと思う。低予算で思い通りにならないことばかりのはずだが、そんな逆境をはねとばす、才能とエネルギーに満ちあふれている。

 

5月24日

 ゆらゆら帝国 2009.04.26LIVE @日比谷野外大音楽堂

YURA YURA TEIKOKU LIVE 2005-2009 -DVD-

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爆音映画祭ではライブ映像作品も上映される。今回見たのは、ゆらゆら帝国。一度はライブを観ておきたかったが、観られないまま解散してしまったバンドだ。
さすが爆音上映。ライブハウスさながらの腹に来る重低音。ライブ疑似体験として申し分ない体験だった。ただ、ライブを座って観る経験がないので、ゆらゆら帝国の心地よい音楽についつい、うとうとしてしまった。しかし『夜行性の生き物3匹』でおめめぱっちり。終盤にさしかかると、もくもくと弾き続ける亀川千代とは対照的に、坂本慎太郎の動きがどんどん激しくなっていく。荒ぶる坂本。躍動する坂本。音もうねりにうねっていた。
映像も素晴らしく、ゆらゆら帝国の音楽をよーく知っている人じゃないと撮れないようなカメラワーク。なんと監督はモテキを撮る前の大根仁だった。なっとく。

デス・プルーフ in グラインドハウス 

こちらも映画館でずっと見たかった映画である。この映画は上映後必ずと言っていいほど、拍手喝采が巻き起こるとの噂を聞いていたからだ。終盤の盛り上がりと、衝撃のラストから、確かに拍手が巻き起こるのも無理ない内容だ。タランティーノ映画特有のだらだらとした会話、その極北がこの映画であるとしばしば言われ、中には退屈と感じる人もいるかもしれない。しかしよく会話を聞いてみて欲しい。だらだらしてるだけに聞こえる会話はストーリー上必然である。小さな伏線の積み重ねが終盤の盛り上がりと拍手喝采を産むのだ。
さあ、爆音上映ではどうだったか。起きた。大拍手が起きた。「THE END」の文字が現れるとほぼ同時に。あー、みんなこの時を待ってたのね、と不思議な一体感が生まれ映画の興奮と混ざりあう。至福!!心から生きてて良かったと思いました。

 

5月25日

 愛のむきだし

 この映画、4時間ある。しかし体感時間は1時間半くらい。映画の面白い要素を全部詰め込んじゃったんじゃないかと思えるくらい面白い場面の連続で、あっという間に時間が過ぎる。アクション、ギャグ、宗教、エロ、グロ、愛、愛、愛!!!登場人物はみんな愛を求めるキチ○イだ。むきだしの純愛映画である。
今回の爆音上映は「怒濤」という言葉がしっくりくる。上映開始から1時間経って出るタイトルにはいつも興奮させられるが、爆音でいつもの何倍もの脳汁が溢れ出た。「ゴゴゴゴゴゴゴ」という重低音が爆音で強調され、まさに波か、地震か、とにかく天災に飲み込まれるような体験をした。家で見ているだけでは気付けなかった音だ。 押し寄せる巨大な波に飲み込まれるように、むきだしの愛に溺れてしまったようだ。
 

ファントム・オブ・パラダイス 

 『オペラ座の怪人』×『ファウスト』なロックミュージカル。個人的オールタイムベスト10の中にいつも入れるくらい好きな作品。スプリットスクリーンを駆使したデ・パルマカットはいつ見ても痺れる。そして何より、この作品の醍醐味は音楽だ。劇中で悪役を演じているポール・ウィリアムズが主に作曲している。曲も歌詞もめちゃくちゃいいし、なんといってもライブ感が凄まじい。大きなスクリーンに爆音で上映されると、ほんとにライブを見ている気になった。特にビーフのライブシーンには圧倒させられた。今回改めて思ったのは「ビーフかわいそう」である。なんにも悪いことしてないのにあんなことに…不憫だ。音楽を楽しんでいるとあっという間に狂乱のクライマックス。この作品にここまで惹かれるのはこのクライマックスがあってこそだ。言葉にできない感情が押し寄せてきて、間髪入れずに、突き放すようなエンディングテーマ『The Hell of It』が流れる。ほんとにどうしようもない気持ちになるが、同時に清々しい。ほんとになんと伝えて良いか分からない。ほんとに。

何の取り柄もなく 人に好かれないなら 死んでしまえ
悪い事は言わない 生きたところで負け犬
死ねば音楽ぐらいは残る お前が死ねばみんな喜ぶ
だらだらといつまでも生き続けるより 思い切りよく燃え尽きよう


Phantom of the Paradise - Paul Williams - The Hell ...

 

 ロッキー・ホラー・ショー(パフォーマンス付き)

僕のラストバウスとなったのはこの作品。DVDは何回も見たが、それではこの映画を体験したことにならない。この映画は劇場で「参加」して初めて体験したことになるとのこと。ずっと体験したかった映画だ。知らない人には何のことだかさっぱりかもしれないが、これは世界初の「観客参加型」映画である。キャッチーなロック音楽に、突っ込みどころ満載なゆるーい内容(観客は実際にスクリーンに向かって野次を飛ばす)。しかし、ただ楽しいだけではない何かがこの映画にはある。「夢見てちゃダメ、夢になりなさい」このパンチラインに象徴されるように、夢になった気になれるし、明日からも夢になろうっていう気になる。

上映前にこんなお楽しみセットが売っていた。

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こんなグッズを駆使して大騒ぎするわけだ。劇中の結婚式のライスシャワーに合わせて米をまき散らしたり、お気に入りのキャラが登場したらクラッカーを鳴らしたり、紙吹雪をまいたり、やりたい放題。初参加の人はヴァージンと呼ばれ罵られたりするが、一緒に踊ったりするうちにロッキー・ホラー・ショーの虜だ。次からはコスプレして参加したくなる(僕も次は何か簡単なコスプレをしようと思っている)。とにかく体験しなきゃこの面白さは分からない。この機会にヴァージンを捨てれて本当に良かった。

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最後はこんな風にステージにあがって皆で踊る。くっそ簡単なおどりなので誰でも踊れます。


Time Warp - Rocky Horror Picture Show - YouTube

 

 

さて、これほどの映画体験を与えてくれた吉祥寺バウスシアターがついに閉館となった。今や映画館はシネコンが主流となり、ミニシアターが続々と閉館に追い込まれている。地方はもちろん、東京までも閉館のニュースが相次いでいる。僕は映画は映画館で見てこそ真に楽しめると思っている。なぜなら、映画は家のテレビで見るために作られていないからだ。今回の爆音映画祭では、今まで自宅で鑑賞してきた大好きな映画たちを大きなスクリーンで見て、爆音で聴いて、多くの新たな発見をすることができた。他の観客と一緒になって笑い、涙し、拍手する空間がそこにあった。こんな素晴らしい空間を根絶やしにしてはダメだと思った。まして、爆音上映という世界的にも例がない企画をやってきた吉祥寺バウスシアターが経営難で潰れるなんて、なんて世知辛い世の中なんだ。
この貴重な文化を絶やさないようにと、現在、署名運動が起きている。署名を武蔵野市に提出し、市から助成費をいただきたいというものだ。映画館で映画を見るのが大好きな人たちはぜひ署名してもらいたい。

Top of Baus on Baus~吉祥寺バウスシアター再生へ向けて
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