迷子の衝動

好きな映画や音楽のお話を。

【オールタイムベスト映画】デビルズ・リジェクト

昨晩、ちょいと魔が差して一本の大好きな映画を夜更かしして観てしまった。やっぱり大好きだ。オールタイムベストだ。ってことで、なんとなくブログを書いてみたくなった。

観た映画はロブ・ゾンビ監督の『デビルズ・リジェクト』

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The Devil's Rejects Trailer - YouTube

日本版は『マーダー・ライド・ショー2』というタイトルがつき、同じキャラクターも登場するが続編ではない。ロブ・ゾンビ監督自身が明言している。『マーダー・ライド・ショー』自体もたいへん面白い映画だが、全く性質の異なる映画である。

ジャンル的にはホラー、スプラッターに括られがちだ(実際、レンタルビデオ屋さんにもその棚にある)。しかし、冒頭からホラーの枠を超えた何かであることが宣言される。

 

悪魔も拒絶する「究極の悪」

"Devil's Rejects"とは、悪魔さえも拒絶する程の「究極の悪」を意味する。主人公である殺人一家ファイアフライ家に付けられた呼び名だ。彼らは一家で日常的に殺人を繰り返す。飯を食うように人をさらい、歯を磨くように凌辱する。誰もが「逮捕して死刑にするべし」あるいは「死刑なんて甘い。同じ苦しみを味わわせるべき」と思うだろう。そんな我らが民衆の代表、保安官達が一家を襲撃するところから物語が始まる。普通のホラー映画は一般人が殺されるところを主に描くが、本作は初っ端から違う。正義 VS 悪、神 VS 悪魔の戦いなのだ。兄弟を殺され、復讐に燃える保安官ワイデルは言う。「みんな!神の任務を果たすとしようか!」

壮絶な銃撃戦の後、ファイアフライ家の兄妹が逃走する。そこから映画は2人の逃避行を描いたロードムービーに変化する。

 

様々なジャンルを横断する豊かさ

2人は離れて暮らす父親のキャプテン・スポールディングとモーテルで落ち合う約束をする。そのモーテルを舞台に、先ほどロードムービーに変化したかに思えた映画が、スプラッターに変化する。この映画は一つのジャンルで括ることができない。全体的には70年代のアメリカンニューシネマ的な空気感が漂うが、80年代の残酷スプラッターも合わさっている。僕の大好きな要素が凝縮されているのだ。これ一本観れば、様々な名作を同時に体験できるといっても過言ではない。

 

俺は悪魔だ!

今度はモーテルで出会った旅行者のバンド「バンジョー&サリバン」の一行を襲う。何回見ても彼らを殺す理由がよく分からない。理由なんてどうでもいいのだ。だって「究極の悪」なんだもん!としか言いようがない。兄のオーティスは旅行者の男2人を、隠した銃を掘り返すために連れ出す。そこで男2人は反撃に出るが、そんなことで動じるオーティスではない。あっさり形勢逆転し、2人を追いつめる。そしてオーティスは言う。「神に祈れ。助けにきてくれってな。俺の脳天に雷を落としてみやがれ!」絶体絶命の男は言われたとおり神に祈る。しかし、当然ながら神は雷を落としてくれやしない。オーティスは神に苦しめられる素振りをして見せたあと、こう吐き捨てる。

I am the devil, and I am here to do the devil's work.
(俺は悪魔だ。悪魔の仕事をするためにここにいる。)

声に出して読みたい英語なので英語で書いてみました。罪のない人を殺そうとしている殺人鬼にもかかわらず、多くの人がこのシーンでオーティスを「かっこいい」と思うだろう。カリスマ性のある魅力的な犯罪者は、古今東西に存在する。この台詞はアメリカ犯罪史に残るカリスマ、チャールズ・マンソンが言ったとされる有名な言葉から引用されている。人はなぜ悪魔に魅了されてしまうのだろうか。

 

曖昧になる「善」と「悪」

保安官ワイデルは復讐心を募らせたあげく、ついには法を逸脱してファイアフライ家を捕らえる。ワイデルは復讐の鬼と化して彼らを痛めつける。その様は、もはやどちらが悪魔か分からない。「同じ苦しみを味わわせるべき」だと思っていた観客は、いざその状況になってみると、どう感じるだろうか。正義が勝って嬉しいと思うだろうか。僕は純粋にそう思えなかった。彼らがいたぶられる様を観ていると、だんだんと感情移入してしまい、彼らが助かることを祈ってしまうようになっていく。善と悪の境界が曖昧になる映画は他にもあるが(有名なところでは『時計じかけのオレンジ』、超ライトなものだと『ダークナイト』といったところだろうか)、本作ほど「究極の悪」を描いた作品はないため、より大きく感情が揺さぶられる。

 

自由の鳥

命からがら生き延び、再び逃走を図る3人。血まみれでいつ死んでもおかしくない状況の中、ハイウェイを走り続ける。BGMはLynyrd Skynyrdの"Free Bird"。ここからエンドクレジットまで、いっさい台詞はない。ハイウェイを走り続けた、その先に彼らを待っていたものとは・・・。


Lynyrd Skynyrd-Free bird - YouTube

 

さすがにオチまで言ってしまうのは避けるが、このラストシーンで「感動した」「泣いた」と言う人は、みんな仲間だ!絶対友達になれる気がする。

「究極の悪」に魅了されてしまうのは「自由」だからだ。人は自由を求める。しかし、絶対超えてはならない一線もある。「究極の悪」はそれさえも超える。瀕死の状況でも、体制に屈しない。逮捕されるくらいなら死を選ぶ。そこに人は「自由」を感じるのだ。

 

 

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