迷子の衝動

好きな映画や音楽のお話を。

第7回爆音映画祭 感想まとめ(その1)

ここ数週間、毎週のように吉祥寺バウスシアターに通っていた。吉祥寺バウスシアターが5月31日で閉館するということで「THE LAST BAUS さよならバウスシアター、最後の宴」という映画祭が1ヶ月以上にわたり催されていたからだ。過去に上映された話題作、問題作、爆音上映、毎日好きな映画に見たい映画が目白押し。僕は爆音上映を主に鑑賞した。爆音上映はその名の通り、爆音で映画を上映する。吉祥寺バウス発祥のそれは、誰も聴いたことのない音量で、誰も体験したことのない映画体験を与えてくれる。世界に類を見ない上映会だ。

スクリーンの両端にこのような特大スピーカーがどかんと置いてある。ここからライブハウスさながらの音量で爆音が飛び出す。

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初めて爆音上映を体験したのは昨年、『AKIRA デジタルリマスター版』だった。

AKIRA 〈Blu-ray〉

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 正直なめていた。最初の一音「ドゥーーーーン!」という音で度肝をぬかれた。爆音て、ここまでか、と。音楽が好きで様々なライブに行き、爆音、轟音には慣れている(マイブラとかモグワイとかで)つもりでいたが、映画館でこんな音が鳴るなんて思ってもみなかった。『AKIRA』は、映像はもちろん、音楽もまた素晴らしいということにあらためて気付かされた。効果音や台詞までもが極限まで研ぎすまされている。ただ音がでかいだけでなく、作品一つ一つに爆音調整なる作業を行い、ベストな「爆音」状態を提供してくれる。自宅での鑑賞では絶対に気がつかない何かを発見できるのが、爆音上映の醍醐味だ。

吉祥寺バウスシアター最後の爆音映画祭で鑑賞した映画の短評を書き留めておくことにする。またいつか鑑賞できる日が来ることを願って。

4月29日

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ 

 見るのは2回目。ジム・ジャームッシュ監督のヴァンパイア映画。ジム・ジャームッシュがヴァンパイア映画を撮るとこうなるよねっていう期待を裏切らない、いや、期待通りすぎて、むしろ期待以上!自分でも何を言っているのかわからないが、とにかくジム・ジャームッシュ好きにはたまらない映画である。
とにかく音楽が素晴らしい、まさしく「爆音向き」な映画と言えるだろう。ジョゼフ・ヴァン・ヴィセムというジム・ジャームッシュとアルバム出したりしてる現代音楽家が作曲している。ヴァンパイアが生きてきた何世紀もの歴史を感じさせるような、重厚でオリエンタルな音楽。それを爆音で浴びることができる、至福の時。
キャストも素晴らしく、トム・ヒドルストンティルダ・スウィントンミア・ワシコウスカのヴァンパイアっぷりがたまない。ああああミア・ワシコウスカに血吸われてえええ!!おっと、失礼しました。

5月10日

バットマン

バットマン [Blu-ray]

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 バットマン映画と言えば、今やクリストファー・ノーラン版の『ダークナイト』が最高傑作という風潮になっているが、馬鹿野郎!ティム・バートン版をなめんなよ!いや、もちろんダークナイトは僕も大好きですが、ティム・バートン版も素晴らしいんですよ。なんといってもジャック・ニコルソン版のジョーカー!このジョーカーのキチ○イっぷりが恐ろしい。爆音上映になると、その映画の持つ狂気性、暴力性がより際立つ傾向にあるが、このジョーカーも恐ろしさが倍増していた。プリンスの主題歌も爆音で聞けて大満足。

バットマン・リターンズ

バットマン リターンズ [Blu-ray]

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 バットマンに続いて、2作目『バットマン・リターンズ』。僕はバットマン映画の中で、この『バットマン・リターンズ』が一番好きだ。ティム・バートンの映画の中でも一番だと思っている。2人のヴィラン、ペンギンとキャットウーマンが登場するが、この2人の生き様(死に様)がもう悲しくて悲しくて…。思わず涙が溢れてしまう。両親を殺されたバットマン。奇形に生まれ、親に捨てられたペンギン。男性主義社会に揉まれ、疲弊し、上司に殺されてしまうキャットウーマン。悲しい過去を持つ3人は互いに惹かれ合いながら、それぞれの敵に挑みつづける。観れば観る程、奥深い映画だ。
この作品を語りだすと止まらなくなってしまうので、これ以上の感想は割愛。高橋ヨシキ氏の著書『暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌』に超ためになる『バットマン・リターンズ』解説があるので、興味のある方はぜひ。キャットウーマンの表紙が目印。名著です。

暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌

暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌

 

 

ブルーベルベット

デヴィッド・リンチの作品は難解だと思われがちだ。しかし、本作は純粋無垢の青年がとある事件に深入りすることで、この世の暗部を知ることになる、というお話。簡単に言っちゃえばそれだけ。それだけなんだけど、スクリーンからムンムンと色気が漂うような、ムンムンと匂いが漂ってくるような、そういう不思議な魔力を持った映画でもある。初めて映画館で観て、この映画の持つ力に圧倒された。
むきだしの欲望、暴力。それを一身に体現しているのが、デニス・ホッパー扮するひたすら暴力的な男フランクだ。この男、次の瞬間にどんな暴力が飛んでくるのか分からない。拳か、言葉か、性的虐待か、何をしでかすのか分からない恐怖。この理不尽極まりない男に主人公が連れ回されるとき、僕は一緒になっておびえていた。「この人は完全に別の次元を生きているような気がする」というような、相手の考えが全く分からないような恐怖を体験したことはないだろうか?爆音上映でその恐怖は倍増する。下手なホラー映画より全然怖い。僕たちは主人公と一緒に、グロテスクなこの世の暗部へと連れて行かれ、迷い込んでしまう。美しい芝生の下には害虫が蠢いているのだ。ああ素晴らしきこの世界。

ファイト・クラブ

 上映前、一番前の席を確保した僕は非常に緊張していた。というのも、『ファイト・クラブ』は僕にとっての生涯ベスト級の映画だからだ。初めて鑑賞した際、映画に殴られたかのような衝撃を受けた。劇中の『ファイト・クラブ』のメンバーのように、こてんぱんに打ちのめされるのと同時に生を実感し、「何も恐れることはない」という気になった。しかし終盤、そんな気持ちになった自分をあざ笑うかのような展開が待っている。これほどまでに感情を揺さぶられた映画は初めてだった。
爆音上映では、ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンの、カリスマ性溢れる名言たちが爆音でぶっ飛んでくる。

「この世で1番強くて頭の良い連中、だが可能性の目がむしり取られている。ほとんどの人間がガソリンスタンドの店員か、ウエイターだ。もしくは会社の奴隷。広告を見ちゃ車や服が欲しくなる。嫌な仕事をして、要りもしない車や服を買わされるわけだ。俺たちは歴史のはざまで生まれ、生きる目標も場所もない。新たな世界大戦も大恐慌もない。今あるのは魂の戦争。毎日の生活が大恐慌。テレビにこうそそのかされる、いつか自分は金持ちかスーパースターかロックスターだって。だが違う。少しずつ現実を知り、とうとう頭がキレた!」

 

「職業がなんだ?財産がなんて関係無い。車も関係ない。財布の中身もそのクソッタレなブランドも関係無い。お前らは歌って踊るだけのこの世のクズだ」

 

「ウジ虫どもうぬぼれるな!お前らは美しくもなければ特別なもんでもない。他と同様朽ち果てて消えるだけの有機物質だ」

僕たちはこれらの言葉に救われる。そしてこれからも救われるだろう。ずっとファイトクラブの一員になった気で生きていくだろう。
今回の爆音上映で一番衝撃だったのは、主人公が自らを銃で撃ち抜く場面だ。初鑑賞の際、殴られたと感じたこの映画に、今度は銃で撃ち抜かれてしまった。そしてクライマックス、この世で一番美しい世界の終わりが待っている。その時にはきっと、ピクシーズの『Where Is My Mind ?』が流れていることだろう。


Pixies - Where Is My Mind - YouTube

 

 

その2はまた今度!